そのため強烈な中央集権の権力国家が生み出された。
しかし実際には、配給された物資を密かに売り買いする「闇市」も存在した。国家が、この工場は年間に石炭1トンと予測して配給しても、余るケースもあり逆に不足する工場もあった。不足した工場は、余った工場から石炭を闇で買い取ったりしていた。国家も、配給制度の「硬直性を一定に補う制度として」その闇市を暗黙に容認していた。「独裁国家を維持するために」一定の闇取引を容認した方が、過不足の調節に便利であったためだ。
現在、環境保護を名目に二酸化炭素排出権を各国で決め、その範囲内で二酸化炭素を排出する事が議論に成っている。そして、その排出権を売買し、二酸化炭素を少なく排出した国が、余った権利を割り当て以上に多く排出した国に売り利益を得ると言う、いわゆる二酸化炭素排出権市場というものが議論されている。
しかし、二酸化炭素を排出できないという事は原油等を燃焼させる事が出来ないという事であり使用できない原油を所有していても無意味なので、二酸化炭素排出権の割り当て制度は、原油の割り当て・配給制度に行き着く可能性がある。
現在、原油が高騰している原因の1つに、国際的に原油生産国・企業が一部に集中し、独占体制が強化され、価格カルテル・価格操作が容易になってきている問題がある。WTOの推進する「貿易自由化」により企業乗っ取りが盛んになり、日本の新日鉄に乗っ取りを仕掛けたインド系の鉄鋼会社ミタルのように、特定の資源分野で超独占体制を築く巨大企業が生まれてきている。
超独占企業の出現で、資源が世界的に超中央集権で管理されるようになると、かつてのソ連の独裁国家のように資源は配給制度に近づいて行く。
そのような超巨大企業は、原油の配給制度を確立し、中央集権管理体制を確立しようとする。しかし、正面から中央集権体制を確立し配給制度を行うとは言えないので、二酸化炭素排出権割り当てと主張する。原油の配給制度=ロックフェラーによる世界石油帝国=世界統一政府の完成による配給制度を、「裏返す」と二酸化炭素排出権割り当て制度になる。
社会主義の独裁国家が闇市場を容認したように、原油の配給制度の硬直性を補い、独裁体制の矛盾を回避し「独裁体制を維持する」手段として、余った配給物資を売り買いする市場は、当然「容認」される。それが二酸化炭素排出権市場である。
ファシズム体制は常に「人権擁護」「環境保護」といった耳触りの良い、偽善的な宣伝文句によってデコレーションされ推進される。