書物短評 : 大連商業会議所編 「満蒙の鉄道問題に就いて」 1928年刊
10万人もの日本人が、米軍によって焼死させられた東京大空襲から69年が経過した。毎年、日本人は、この日に「深い哀悼の気持ちを込め、祈りを捧げる」。
第二次世界大戦中、日本が満州帝国を「建国」すると、日本企業そして中国大陸で「一旗上げよう」とする日本人ビジネスマンが大挙し中国大陸に渡り、そこでビジネスを展開した。
本書は、中国・大連に渡った日本人企業家達=大連商業会議所が現地でビジネスに従事する中、中国大陸において「察知した」アメリカの危険な動きについて日本国家に警告を発した書物である。
本書で大連商業会議所は、前ブッシュ大統領一族の縁戚に当たる鉄道屋のハリマン一族が、中国大陸において日本の満州鉄道と全く並行した別の鉄道を建設し、さらに満州鉄道を包囲する鉄道網を建設し始めている事実を指摘し、警告を発している。
ハリマン一族のビジネス・スタイルは、企業乗っ取りであり、乗っ取り相手の鉄道網に全く並行した鉄道網を建設し、破格の低価格運賃で競合相手を窮地に追い込み、さらにライフル銃で武装した強盗団を結成し、乗っ取り相手企業の経営者を「殺害」し、相手企業を乗っ取る、マフィア・ビジネスであった。
そのハリマンが、日本の鉄道網を包囲し、全く並行した路線の建設を始めていた事が、本書では語られている。
このハリマン一族は、後に、その経営銀行の中から父子ブッシュ大統領を出す、「アメリカ国家そのもの」であった。
この人脈を正確に把握していたなら、日本国家は早晩、アメリカが日本への強硬手段に出てくる事、アメリカ国家が日本に対し、「ライフル銃で武装した強盗団を結成」する=事実上の宣戦布告を行う事を事前に早期に察知し、1928年の段階で対策を練ることが可能であった。
この1928年は、アメリカ政府が「ハルノート」によって日本への原油・鉄鉱石・鉄クズの輸出を止め、日本経済への破壊宣告=宣戦布告を行う13年前であり、日本にとっては十分に時間的余裕があった時期に該当する。
そして、この「ハルノート」を起草したアメリカ国務長官コーデル・ハルは、ハリマンの経営する系列銀行の顧問弁護士であった。
事前に、日本を囲む周辺国の対日戦略を正確に把握し、正確な分析を行う事が国家にとって死活問題である事、
それが戦争を回避し、国民を戦争の被害から守るための最重要課題である事が、本書からは理解できる。
本書の「情報の意味を正確に理解・分析し得ていたなら」、東京大空襲も、広島・長崎への原爆投下も回避し得たのであり、日本人同胞の命を多数救う事ができたのである。
この反省は、東京大空襲の犠牲者に対し「哀悼の意を捧げる」事では、成し遂げられる事はない。
2104年現在、日本を囲む、中国・北朝鮮そして米国の対日戦略を正確に読み解き、TPP交渉において米国が、どのようなアジア戦略、対日戦略を練り上げているのかを明確に読解する事が、東京大空襲での犠牲者への本当の「祈り」となる。
*・・・TPP交渉の内実、交渉の舞台裏に関しては、
メールマガジン版オルタナティヴ通信、3月号(2014年)、
「TPP交渉の、舞台裏」、参照。
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