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2011年11月24日

想定内の、アメリカ国債、ドルの紙クズ化


書物短評 : ウィリアム・フォークナー全集  全27巻  冨山房



 アメリカ南部の片田舎で小説を書き続けた「世間知らずの田舎者、世界全体を知らない」フォークナーが、ノーベル文学賞を受けた理由は、近代社会に入り、共同体、帰属する社会集団を失った人間達が、必死で、もう一度共同体を取り戻そうとする姿を描いたためであり、しかも人類は、未だ新しい社会共同体を形成出来ていない。

そのため、人類は、古い共同体=民族・国家等に「無理矢理、自分の帰属先を見つけ出そうとする」(注1)。しかし「実体の無い、空疎な、虚構の共同体である民族・国家に自己を帰属させ、それで良し、として自己正当化するには」、他の民族に対する差別と排除、抹殺と言う「テコの原理」が必要となる。「自己の中身が空虚であり、主張すべき実体の無い人間は、他人を批判し、否定する事によってしか、自己正当化の根拠を見出す事が出来ない。」その結果、近代における民族主義、国家主義は、異民族・隣接する他の国家に対する差別と虐殺、戦争を「テコ」とした、強烈な中央集権国家=ファシズムに行き着く。

現在社会の最も「精鋭な問題がファシズム」になる。

フォークナーは、それを無意識的に描き出している。無意識的と言うのは、フォークナー自身には、南北戦争で崩壊したアメリカ南部の奴隷社会を「懐かしみ、後ろ髪を強く引かれている」面が見えるためである。

必然的にフォークナーは、アメリカ開拓時代からの古い民間伝承=様々なアメリカ開拓にまつわるエピソードを、一種、懐古趣味的に大量に作品に取り込んでいる。

 その代表的な民間伝承には、後に大富豪となり、ロックフェラー等に引き継がれてゆく財産を築いた「名門貴族アスター家」の毛皮売買のエピソードがある。アスター家は毛皮売買で巨万の富を築き、その一族系列には英国のチャーチル家、ダイアナ元皇太子妃(故人)が含まれている。

アスター一族のビジネス・スタイルは、アメリカ先住民(インディアンと蔑称されてきた)に対し、ガラス球を宝石と偽り、1つのガラス球を数百枚の毛皮と交換する、という「スタイル」であった。ほとんど「タダ同然」のガラス球を宝石と偽り、先住民を騙す、サギ商法である。

詐欺師。これが英国名門貴族にして、ヨーロッパ大陸・米国社交界の「花形貴族であり続けてきた」アスター一族=英国首相チャーチル一族、ダイアナ一族の「正体」である。

 またフォークナーの描く民間伝承には、白人が老馬にコールタールを塗り、馬の内臓にガスを注入し、馬が若く毛並みにツヤがあり、体格が良いように「見せ掛け」、アメリカ先住民に高値で馬を売り付け、商取引が終わって数十秒後に、馬からガスが抜け、老馬の姿に戻り、激怒した先住民から、白人が銃で応戦し、ゲラゲラ笑いながら逃亡する、という「サギ商法」も出て来る。

この2つのエピソードが、先住民を騙し、虐殺し、その土地・財産を奪って形成されたアメリカ建国の「真実を正確に表現している」。

この老馬にコールタールを塗り偽装する言う「サギ商法」は、そのまま、無価値なサブプライム債券を、トリプルAと言う「ウソの評価・格付け」で偽装し、世界中から資金を「ダマシ取り」、その結果、起こった今次の、世界恐慌そのものの原理である。

アメリカは、たまたまサブプライムという商品を売る「ミスを犯した」のでは全く無い。

「サギ商法」は、アメリカの国家建設原理そのものなのである。

アメリカ・ドル、米国国債は、その「サギ商法」の正体を現し、やがて紙クズになり、暴落する。

老馬を売り付けた白人が「先住民=有色人種」に銃を乱射しながら、騙された先住民をゲラゲラ笑って嘲笑しながら、逃亡してゆくように、アメリカは、やがて、金融恐慌の解決のために戦争を起こし、銃を乱射しながら、「大量に溜め込み、紙クズとなったドルと米国債に激怒する有色人種=日本人」を、ゲラゲラ笑い嘲笑しながら、逃亡して行くであろう。

フォークナーが描き出したように、それは「アメリカ合衆国の建国原理」そのものである。

今後起こる、アメリカ国債の紙クズ化、ドルの紙クズ化には、このアメリカ国家の建国原理が明確に刻印されている。



注1・・・ベネディクト・アンダーソン 「定本・想像の共同体」  書籍工房早山、参照。

posted by 00 at 16:09 | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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